アイスエイジはマジック初の独立型エキスパンションで、ブースターパックだけでなくスターターボックスという60枚入りの小箱での販売もされていたんだ。初めて基本セットとは違う絵柄の基本地形が登場し、これを使うのはちょっとしたお洒落だった。氷河期を舞台としたセットだけあって、涼しげなイラストが熱いデュエルに一服の清涼をもたらしてくれたものさ。

plainsイラストが連続していてお洒落


氷雪地形はイマイチだった

アイスエイジのテーマとして、氷雪地形を利用したカードというものがあったね。基本土地の一種で、氷雪森とか氷雪島とかあったわけだ。それに付随して、様々なカードに氷雪土地を利用したり参照したりするようなカードが存在していたんだが・・・。こいつらがどいつもこいつもポンコツなんだよ。トーナメントで活躍したカードはないと言っていい。強いて言えばGlacial Crevassesという赤いエンチャントが使われていたかな。ただし、このカードは現代の常識からはかなりかけ離れたカードだ。

Glacial Crevasses

Glacial Crevasses
(2)(赤)
エンチャント
氷雪山を1つ生け贄に捧げる:このターンに与えられるすべての戦闘ダメージを軽減する。



能力だけ見れば、まあ、こんなカードもあるかな、といった感じだが、このカードはまさかの赤だ。赤いカードなのに防御専用の効果を持つという、かなり個性的なカードといえるだろうね。一部の低速な赤いデッキに使用されていた。ついでに言うと、こんな良く似たカードも存在していた。

Sunstone

Sunstone
(3)
アーティファクト
(2),氷雪土地を1つ生け贄に捧げる:このターンに与えられるすべての戦闘ダメージを軽減する。



ちなみにGlacial CrevassesがレアでSunstoneはアンコモンだ。起動マナの要不要や生贄にできる氷雪土地の違いがあるが、なぜこんな似たカードを同じセットに収録したのかは謎だ。氷雪土地に関するカードははるか後になって発売されるコールドスナップというセットで大幅に補強されるが、正直言ってアイスエイジだけでは折角の新要素を活かしきれていなかった感があるね。


ゆっくり累加アップキープしよう

アイスエイジはゆっくりした環境だったのだが、その原因はこのセットのキーワード能力である累加アップキープがかもしれないな。これはパーマネントのアップキープにマナやライフの支払いを要求するものだが、毎ターン支払いコストが増えていってしまうんだ。例えば累加アップキープ(2)と書いてあれば、最初のアップキープには2マナ支払うだけでいいんだが、次のターンは4マナ、その次は6マナ、という具合に維持コストが増えていってしまう。こうしたカードが多くあり、かつ活躍できるような環境を整備するには、全体的にカードパワーを下げて環境を遅くするのがベストだったのだろう。

正直言って、累加アップキープのあるカードで大きな活躍をしたカードは少ないのだが、いくつか紹介しよう。

InfernalDarkness

Infernal Darkness
(2)(黒)(黒)
エンチャント
累加アップキープ (黒),1点のライフを支払う。
土地がマナを引き出す目的でタップされた場合、それは他のいかなるタイプのマナの代わりに(黒)を生み出す。


黒単色デッキ相手には効果がないが、それ以外のデッキには強烈なマナ拘束手段となるカードだ。当時のスタンダードで、トーナメントデッキのサイドボードに入っていたこともある稀少な累加アップキープ持ちカードだよ。

Glacial Chasm

Glacial Chasm
土地
累加アップキープ 2点のライフを支払う。
Glacial Chasmが戦場に出たとき、土地を1つ生け贄に捧げる。
あなたがコントロールするクリーチャーは攻撃できない。
あなたに与えられるすべてのダメージを軽減する。


この頃までたまに見かけられたマナの出ない土地で、その中でも実用的な部類のカードだ。デメリットの大きさが目立つが、それ以上にあらゆるダメージを軽減できるというメリットが凄まじい。こんな能力なのに、このカードはアンコモンなんだよ。小難しい使い方はせず、遅いデッキが1~2ターンしのぐ目的で使われることがあったかな。


IllusionsofGrandeurIllusions of Grandeur
(3)(青)
エンチャント
累加アップキープ(2)
Illusions of Grandeurが戦場に出たとき、あなたは20点のライフを得る。
Illusions of Grandeurが戦場を離れたとき、あなたは20点のライフを失う。


Donateおそらく世界一有名かつ強力な累加アップキープを持つカードだろう。スタンダードでアイスエイジが使えたころは全くのカスレアだったが、ウルザズ・デスティニー<寄付/Donate>というカードが誕生してから評価がひっくり返った。自分が20ライフを獲得した後、<寄付>を使い相手に送りつけるんだ。Illusions of Grandeurをバウンスしたり、あるいは放っておけば累加アップキープが支払えなくなって勝手に場を離れてくれる。キーカードが2枚しかない即死コンボデッキの誕生ってわけだ。


何て書いてあるのか分からないカードたち

NecropotenceこのIllusions of Grandeurと一緒に活躍したのが、同じアイスエイジの黒いレアである<ネクロポーテンス>だ。このカードについては以前話したことがあったね。あっという間に必要なカードを集めてくれる、超強力ドローエンジンである<ネクロポーテンス>は、本来ドローが得意な色の青だけで完結するIllusions of Grandeur<寄付>のコンボデッキにあって、黒なのに中核カードとして活躍した。結果、このデッキはネクロドネイトと呼ばれるまでになったんだ。あまりにも隆盛を誇ったため、最終的には<ネクロポーテンス>自体が禁止カードになってしまった。

その<ネクロポーテンス>の特徴が、やたらと細かい字で書かれたルール・テキストだ。とにかく英文が長くて、滅多に出てこないような単語もあり、どんなカードか理解するのにも苦労した。最後の一文ではご丁寧に"このライフの損失は軽減したり移し替えたりできない"だなんてルールの解説までしてくれている始末だ。アイスエイジには日本語版がなかったし、今のようにインターネットも充実していなかったので、このカードの正しい効果について理解したのはディープ・マジックという書籍が出版されてからだったと思う。この本は当時唯一、アイスエイジまでの全カードが日本語訳付きでリスト化されていて、そりゃもう狂ったように読んだものだよ。

英文が長いカードをもう一つ紹介しよう。今のオラクルの文章も長いのだが、当時の雰囲気を味わってもらうために私がカードの英文を訳してみるよ。

Dance of the DeadDance of the Dead
(1)(黒)
エンチャント(死んだクリーチャー)
いずれかの墓地にあるクリーチャーカードを、あなたのコントロール下で、タップ状態かつ、+1/+1カウンターを乗せた状態で直接場に出す。そのクリーチャーは召喚されたばかりであるかのように扱う。このクリーチャーはコントローラーのアンタップフェイズにアンタップしない。コントローラーのアップキープフェイズの終了時に、このコントローラーはこのクリーチャーをアンタップするために(1)(黒)を支払ってもよい。もしDance of the Deadが場を離れたなら、このクリーチャーをオーナーの墓地に埋葬する。

アンタップフェイズだのアップキープフェイズだの、それに埋葬だなんて古い言葉が目白押しだね。まあ、とにかく、要は墓地からクリーチャーを釣ってくるカードなんだがね。とにかく文章が長くて、字が小さい。しかも全部英語だ。<ネクロポーテンス>のような効果の分かりづらさはないものの、最初に見たときは読むのが大変だったものさ。面白いカードなので良く使ったし、今でもヴィンテージ環境で使われるカードの一つだそうだ。


トリスケリオンとのコンボを見せた強力カード

もう一つテキストが難しい、アイスエイジを代表するカードを紹介しよう。いやあ、ははは、このカードは何と<トリスケリオン>を使ったコンボデッキに使われたという、まさにこのトリ助・リオン一推しの、アイスエイジ最高レアカードだ!大人気だったせいか時のらせんのタイムシフトカードでもあるので、君も聞いたことがあるかな。当時のテキストをそのまま訳すとこんな感じだ。

EnduringRenewal永劫の輪廻/Enduring Renewal
(2)(白)(白)
エンチャント
あなたは手札をテーブル上に公開した状態でプレイする。あなたがクリーチャーカードをライブラリーから引くとき、そのカードを捨てる。クリーチャーが場からあなたの墓地に行くなら、そのクリーチャーをあなたの手札へ戻す。


Dance of the Deadと比べるとテキストが短いが、当時の私にはちょっと難解な文章だった。そもそも、死んだクリーチャーが手札に戻るエンチャントが存在する、なんて常識から外れた効果が理解を妨げていたんだろう。

トリスケリオン最初は使い方が分からなかったが、コンボデッキで活躍した。クリーチャーを生贄に捧げると2マナを生む<アシュノッドの供犠台>と0マナアーティファクト・クリーチャーで無限マナを出した後、<トリスケリオン>のダメージで勝つ、というものだ。なに、無限マナが出ているのだから何も<トリスケリオン>でなくてもいいだって?まあ、確かにそうだ・・・。テンペストが発売されると、このデッキは<トリスケリオン>が抜けてしまった・・・。


何度も死んでいく。不憫。


後半に続く