ふむ、デッキのマナ配分について悩んでいる・・・なるほど、それでこのトリ助・リオンに話を聞きに来た、というわけだね。役に立つかどうか分からんが、いいだろう。誰でも一度は通る道だ。今日はデッキのマナ供給について話しをしようじゃないか。君の<入念な研究/Careful Study>の一助になれば幸いだよ。

マナ供給カードの種類

マナがなくてはスペルをキャストできないね。とりわけ、強力なカードを使うためには多くのマナを供給する必要がある。かといってマナ供給カードばかりをデッキに投入すると、デッキパワーが落ちる。自分のデッキがどんなマナベースを必要としているのか理解し、適切な量のマナ供給源をデッキに組み入れられるのが良いデュエリストだ。

土地カードではなく、あえてマナ供給カード、という言い方をしたのには理由がある。マナ供給機能を持つのは土地ばかりではないのは知っているだろう。<エルフの神秘家/Elvish Mystic>のようなクリーチャーや、ラヴニカへの回帰ブロックの<魔鍵>はアーティファクトのマナ供給源もある。昔は<暗黒の儀式/Dark Ritual>なんていう、黒ければ必ずデッキに入るレベルのマナ供給カードもあったよ。こういったカードの存在は無視できないが、当然、基本は土地カードだ。ひとまずこの"マナ供給源としての土地カード"について話を進めてようか。

暗黒の儀式マナ加速の強さを理解させてくれた先生だ

何を基準に考える?

まず、自分のデッキがどんな勝利手段を目指しているのか理解しよう。ウィニー系なのか、コントロール系なのか、コンボ重視なのか、色々あると思う。重要なのは自分が勝った時に、何枚の土地が場に出ているべきか、という視点だ。ウィニーなのにいつも土地が10枚以上並んでいる、なんてのはデッキの組み方が少々おかしいと考えるべきだろうね。逆にコントロールデッキで、土地が5枚しかないのに勝っただなんて、相手に何かあったとしか思えない。勝つときの姿が思い浮かべられたら、それが大体何ターン目で、何枚のカードをドローしていて、何枚の土地を引いているか判断できるだろう。

もう一つ重要な要素は、デッキを組む時の環境だ。どんなカードがカードプールに存在しているのか、どんなデッキが流行しているのか。その辺を加味して土地枚数を考えるのも重要だね。私がマジックを始めたころの環境は今よりもずっと低速で、土地は多めに入っているデッキが多かった。<露天鉱床/Strip Mine><ミシュラの工廠/Mishra's Factory>がスタンダード・リーガルだったせいもあり、土地は24枚前後を目安にしていた。加えて<ハルマゲドン/Armageddon>が環境にあるので、デッキに投入されたカードのマナ・コストは4ほぼマナ以下で、5マナ以上のカードは入っていても数枚、というデッキ構成が多かったんだ。

ハルマゲドンパーミッション相手に通すと爽快だった!

<ハルマゲドン>の環境に与えた影響は絶大で、こいつのせいである種のデッキは存在が許されなかった、といえる。分かりやすい例では、ウルザランドが存在していたのにトロンのようなデッキはは存在できなかった<ハルマゲドン>対策の一環として、<ラノワールのエルフ/Llanowar Elves><友なる石/Fellwar Stone>といった土地以外のマナ供給源がよく見られたものだ。

友なる石ザ・ダーク出身の歴史あるカード。

4マナ以上のカードはキャストできるかすら怪しいので、主力として<アーナム・ジン/Erhnam Djinn><バルデュヴィアの大軍/Balduvian Horde>が重宝された。今見たらちょっと微妙なカードたちだが、当時は彼らのような4マナ域のアタッカーが重要視されていたんだよ。<ハルマゲドン>という特定のカードが、どんなカードをデッキ投入できるか決めてしまっていた。いくら5マナ以上の魅力的なカードが印刷されても、重いから使えないな、で終わりだった時代だね。

バルデュヴィアの大軍アライアンス最高値のレアだった時期もあった。

土地以外のマナ供給源

自分がメインで使いたいマナ域が3マナの場合、通常はどんなに早くても3ターン目になる。土地は1ターンに1枚しかプレイできない、という大原則があるからね。ここで生きてくるのが、土地以外のマナ供給源だ。<エルフの神秘家>を1ターン目にキャストできれば、2ターン目に3マナを確保することができる。スピードを重視するタイプのデッキであれば、この加速機能は大きい。こういった土地以外のマナ供給源は、デッキのマナ供給量を増やすこと、土地事故を軽減すること、マナ供給を加速し特に序盤のアドバンテージを確立することといった様々な手助けをしてくれる。

もしこれが<エルフの神秘家>でなく、<森の女人像/Sylvan Caryatid>だったらどうだろう。<森の女人像>は自身が2マナなので、2ターン目に出せれば3ターン目に4マナが供給可能となることが期待されるね。しかもこいつは5色のマナを供給してくれる。2色以上のデッキでは色マナの供給を安定させてくれる、という別の役割も果たしてくれるというわけだ。<地勢/Lay of the Land>もこの点では貢献するが、マナ加速の恩恵は与えてくれない。しかし、1マナという点は評価できるね。もっとも、ちょっと前は1マナで5色のマナを供給してくれる<極楽鳥/Birds of Paradise>というカワイイ奴がいたものだ

極楽鳥1マナという特性のため、緑単色デッキでも入る事があった。

<極楽鳥>は緑を代表するマナ・クリーチャーで、マジック創世記から活躍を続けてきた。若いころに5カラー・モノグリーンNWOといった緑中心の多色デッキで世話になったものだ。低マナ域の飛行クリーチャーは緑にとって貴重で、後半に引いても<シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon>の攻撃を一度止めてくれたり、場合によっては<怨恨/Rancor>がついてフィニッシャーになったりしたものだよ。こいつが基本セットから落ちたと聞いた日には、近所の焼き鳥屋で別れを惜しんだものさ。きっとまたいつか、戻ってきてくれると信じている。

事故っても泣かないためには

どんなに土地を入れていても、事故はつきもの。確率を下げることはできても、ゼロにはできないね。土地を引けない場合の対処法がデッキに入っているかというのは、こうした場合大切だ。コントロール系なら軽量のドロー系カードで土地を引っ張ってくるというのが一般的だろう。ほかには除去やバウンスで急場をしのいだり、あるいは防衛クリーチャーでライフ損失を少しでも減らすような対策が考えられるね。

その点でウィニー系のデッキは優れている。土地が2枚でデッキの中の半分以上のカードがキャスト可能であれば、そもそも事故発生確率が低い。コントロール系デッキなら、初手に土地2枚スタートでその後まったく土地を引けなければ手も足も出ない。正しく組まれたウィニーデッキであれば、土地2枚でもある程度戦うことができるだろう。

一方、土地を引きすぎた場合の対応力についてみると、これは逆と言わざるを得ない。ウィニーデッキで土地5枚スタートはかなり勇気がいる。大量のマナの使い道がデッキに用意されていないわけだから、これは仕方ない。コントロール系、特に打消し満載のパーミッション系であれば、土地を置くだけでも強いので、この点では有利だ。3マナがアンタップなだけで、相手は打消しを恐れて強力カードのキャストを控えるだろう

対抗呪文昔は2マナ立てておけばよかったのだが・・・。

テーロスの怪物化というギミックは、この点で面白いといえるね。土地を引きすぎた場合、余ったマナを怪物化コストに使うことで盤面の制圧力を確保できるというアイデアはなかなか面白い。オーラになるクリーチャーもある意味似た部分がある。土地が引けないときはクリーチャーとして出せるし、土地が多いときはオーラとしてキャストしアドバンテージを狙える。

こういった発想は昔からあったんだ。テンペストバイバックが分かりやすい。以前も例に出した<ミューズの囁き/Whispers of the Muse>はこの好例と言えるね。土地が足りない時には1マナドロー、土地が多い時にはバイバックで継続的な手札アドバンテージという具合だ。ほかにもサイクリング、スペルシェイパー、キッカー、共鳴者とスレッショルド、変異、双呪…挙げればきりがない。こういったギミックは、コストが重く使いづらいカードもデッキに投入しやすくする仕組み、という評価ができるね。

土地事故を完全になくすことはできないが、事故が発生してもある程度持ちこたえるような仕組みを組み込むことはできる。土地事故で負けたことを言い訳にするのも少し控えるべきだろう。もちろん、適正なマナ供給源の理解が第一だがね。さて、土地が2枚しかないところ悪いが、もう一度君の<島><破砕/Demolish>だ・・・。