クロニクルと順序が前後してしまったが、今回から基本セット第4版について話すことにしよう。私が買った最初の基本セットで、また最初に日本語版が発売されたセットでもある。基本セットでありながら黒枠として発売されたので、黒枠病に冒されていたいた友人はこの日本語版第4版を買い漁っていたよ。症状が重い時には、「白枠の"神の怒り"では再生を許してしまう」とか、「枠の黒い”アーマゲドン”でないと自分の土地しか壊れない」とかうわ言を言っていた。彼はその後、南米のとある国で秘密裏にベータを印刷している工場があるとのデマを信じ込み、渡航し行方不明となった。

今回は初めて基本セットについて触れるということで、第4版以降も基本セットに収録された様々なカードたちも取り上げていこうと思う。そのため紹介するカードがかなり多くなってしまってね。だから今回から4回に分けて話を進めていこうと思うんだ。ちょっと長くなるが、よろしく頼むよ。


リバイズド(第3版)との違い

Regtowthさて、第4版リバイズドとの一番の相違点はデュアルランドが抜けたことだろう。その他にも"Braingeyser""Demonic Tutor""Regtowth"といった当時の制限カードがいくつか再録を逃しているね。制限カード以外の強力カードでは"Serendib Efreet"第9版で再録された"密林の猿人/Kird Ape"が有名だ。一方で新規に加わったカードとしては、"土地税""ボール・ライトニング""森の知恵"などが有名だ。今見返すとリバイズドより全体的に落ち着いたセットとなっている印象だ。


第4版で最も優遇された白

土地税“土地税/Land Tax”

(白)
エンチャント

あなたのアップキープの開始時に、対戦相手1人があなたより多くの土地をコントロールしている場合、あなたはあなたのライブラリーから基本土地カードを最大3枚まで探し、それらを公開し、あなたの手札に加えてもよい。そうした場合、あなたのライブラリーを切り直す。


膨大なアドバンテージをもたらす"土地税"は、白い"Ancestral Recall"とまで言われた強烈な能力を持つエンチャントだ。一度起動するだけで手札が3枚も増える。しかも、エンチャントなので繰り返し使える。持ってきた土地を戦場に出すかは自分の任意なので、一度起動し始めたら毎ターン手札が3枚増え続けるというとんでもないカードが、たった1マナで出せたんだ。ライブラリー圧縮効果も期待できる。多色化しても土地事故を大きく予防できるし、"ハルマゲドン"のようなカードと相性がいい。強すぎたため、私がマジックを初めて間もなく1枚制限カードになってしまった。


天秤“天秤/Balance”

(1)(白)
ソーサリー

各プレイヤーは、コントロールする土地の数が最も少ないプレイヤーがコントロールする土地の数に等しい数だけ、自分がコントロールする土地を選ぶ。その後、残りを生け贄に捧げる。同じ方法で、各プレイヤーはカードを捨て、クリーチャーを生け贄に捧げる。


ゲームをひっくり返すという言葉がぴったりな"天秤"は、たった2マナで土地、クリーチャー、手札を全て吹き飛ばせる性能を持っている。状況に合わせて使い分けられるのがとても強かった。"土地税"を出し、"Zuran Orb"で土地をライフに変えてから"天秤"をキャストするのが定番だった。1枚制限カードを3枚も使う贅沢なコンボだ。今のルールだと土地を生贄に捧げてから打ち消されるおそれがあるが、当時のルールではそれができなくてね。打消しはインスタントとは別の処理だったから、通ったのを確認してから"Zuran Orb"を起動できたんだ。


神の怒り“神の怒り/Wrath of God”

(2)(白)(白)
ソーサリー

すべてのクリーチャーを破壊する。それらは再生できない。




白の特徴を表すカードとして挙げるべきは"神の怒り"だろう。レアリティの判別が付かなかった当時の私でも、はっきりと「これはレアだね」と確信できるくらい、分かりやすい強力カードだった。1対多の交換がゲームを有利に進める上で重要であり、単に強いクリーチャーを並べるだけのゲームではないと認識させてくれた素晴らしいカードだった。おっと、手札破壊や打消しの重要性も同時に教えてくれたね。とにかく初心者脱却の足掛かりとなった思い出深いカードだったよ。青白コントロールでは4枚投入が当たり前だったね。


白ウィニー隆盛!

ハルマゲドン“ハルマゲドン/Armageddon”

(3)(白)
ソーサリー

すべての土地を破壊する。




"神の怒り"と対をなすように君臨したのが土地破壊の"ハルマゲドン"だ。様々なデッキを「"ハルマゲドン"があるから」という理由で存在させなかった、環境基準カードの代表選手だ。主な用途は単なるマナ拘束というよりは、自分の有利な状況を固定化し逆転を許さないようにすることだった。白ウィニーデッキは"神の怒り"を撃たれる前に"ハルマゲドン"を撃てば勝ち、ということも多かった。別の面では相対的に土地以外のマナ供給源の価値を押し上げたカードであるともいえる。必要以上に土地を戦場に出さないようにするプレイングを教えてくれたカードでもあるね。


十字軍“十字軍/Crusade”

(白)(白)
エンチャント

白のクリーチャーは+1/+1の修整を受ける。




当時の白ウィニーを支えたもう1枚が"十字軍"だね。昔のカードらしく相手の白クリーチャーも強化するので、ミラーマッチではおよそウィニーとは思えないようなサイズのクリーチャー同士がにらみ合う、なんて光景が見られたよ。一方、ブロック宣言後に破壊されると戦線が崩壊するという全体強化エンチャントらしい弱点もあり、相手の手札を予想しながらデュエルする大切さを教えてくれたカードなんだよ。


サバンナライオン“サバンナ・ライオン/Savannah Lion”

(白)
クリーチャー 猫

2/1




"十字軍"と共に活躍し、躍動感あふれるイラストで人気だったのが"サバンナ・ライオン"だ。白1マナで2/1バニラという、コストパフォーマンスに優れたこいつは、当時の私にはなぜこれがレアカードなのか理解に苦しんだものだ。何の特殊能力も持たないこのクリーチャーの優秀さを知るためには、いくつかのマジックの基本理論とカードプールの知識が必要だったからね。こいつのフレーバー・テキストにはなぜか「伝統的にジャングルの王者とされる・・・」と書かれていて、サバンナなのにジャングルの王でいいのか?と不思議に思ったものだよ。


アンコモンも白が強かった

白騎士“白騎士/White Knight”

(白)(白)
クリーチャー 人間 騎士

先制攻撃
プロテクション(黒)

2/2


そんなジャングルの王と一緒に白ウィニーを支えた"白騎士"は、プロテクションのルールを教えてくれた先生だ。マジックを始めた当時、英語の説明書のどこにプロテクションの説明があるのか探すことさえ大変だったものさ。黒いデッキに強いのはもちろん、メインデッキで"ボール・ライトニング"を止める手段としても活躍したよ。"臨機応変"によるプロテクション書き換え対象としても優秀だった。



剣を鋤に"剣を鋤に/Swords to Plowshares"

(白)
インスタント

クリーチャー1体を対象とし、それを追放する。それのコントローラーは、そのパワーに等しい点数のライフを得る。



"剣を鋤に"は単体除去として歴代最強のカードだろう。夢の1マナ確定除去は、クリーチャー除去の得意な黒ではなく白だったんだ。相手がクリーチャーレスデッキであっても、自分がクリーチャーを使っていれば緊急のライフ獲得手段になる。また、破壊不能クリーチャーや墓地利用系デッキに対しても強い。たった1マナのインスタントでここまでの性能は破格過ぎるね。その強さゆえに第4版を最後に再録されていない。しかし"稲妻""惑乱の死霊"が再録されたということもあり、もしかしたら再びスタンダード使える日が来るのかもしれないね。


セラの天使"セラの天使/Serra Angel"

(3)(白)(白)
クリーチャー 天使

飛行
警戒

4/4


"セラの天使"は当時のエース級クリーチャーだ。今の水準で見ると少し物足りない性能だが、"アーナム・ジン"と同様に"ハルマゲドン"と一緒に使われることがあり、こちらはセラマゲドンと呼ばれていたよ。白だけで完結するので、アーニーゲドンよりデッキの自由度が高く、私は青白でセラマゲドンを使っていたね。除去耐性がないので、折角"ハルマゲドン"を打ってもあっさり"剣を鋤に"で除去されることも多かったがね。それでも第4版の環境では高スペックなクリーチャーだったんだ。特に高マナ域のクリーチャーが弱い白にあっては、他に考慮できる比較対象はなかったと言っていい。


防御系カードは白の十八番

赤の防御円"赤の防御円/Circle of Protection:Red"

(1)(白)
エンチャント

(1):このターン、あなたが選んだ赤の発生源1つが次にあなたに与えるすべてのダメージを軽減する。



白と言えば防御の得意な色だ。そんな防御的なカードの代表が各色の"防御円"シリーズだろう。どんなダメージソースでもたった(1)で無力化してしまうという高性能な防御カードだ。しかもコモンだったため、限定構築ではエンドカードになり得る性能だったよ。スタンダードでもよくサイドボードに投入されることになるわけだが、特に"赤の防御円"はエンチャントに手出しできない赤単デッキにとって致命的で、結果赤単色はアーティファクトを使うことが多かったね。


孤島の聖域"孤島の聖域/Island Sanctuary"

(1)(白)
エンチャント

あなたのドロー・ステップの間にあなたがカードを1枚引く場合、代わりにあなたはそのドローを飛ばしてもよい。そうした場合、あなたの次のターンまで、飛行か島渡りを持つクリーチャーしかあなたを攻撃できない。


白の防御カードとしては"孤島の聖域"も紹介しておこう。ドローが止まってしまうという大きなデメリットがあるが、エンチャントに手出しできないデッキだと1枚で完封し得る性能を持っている。前述の"土地税""十字軍""防御円"のように、白はエンチャントが特に強く、結果エンチャント除去のできないデッキを環境に許さなかったという面を持っていたように思えるね。当時活躍したデッキに赤黒や青黒は少なかったと記憶しているよ。


解呪"解呪/Disenchant"

(1)(白)
インスタント

アーティファクト1つかエンチャント1つを対象とし、それを破壊する。




こうした強力なエンチャントに対抗する手段も、やはり白だった。"解呪"は当時の重要な除去で、というのも当時はサイドボードまで含めるとエンチャントもアーティファクトも一切入っていないデッキというのは稀だったんだ。前述のエンチャントのほかにも、アーティファクトでは"Zuran Orb""黒の万力""象牙の塔""ネビニラルの円盤"といったトーナメント常連カードが多くのデッキに採用されていて、今より手札に腐ることは少なかったんだ。


白いカードについては以上だ。次回は青黒のカードを紹介する予定だよ。