まさに嵐を巻き起こした大型セット!!!

よし、では今日は君たちの聞きたがっていたテンペストの話を始めようか。エキスパンションのブロック概念も整い、ウェザーライト号とその乗組員たちのストーリーが本格化していくテンペスト・ブロックだが、その嚆矢たるこのセットは当時かなりのインパクトがあったね。

クリーチャーの水準が全体的に向上し、特にウィニー系デッキが隆盛する環境が整った。単色デッキが増えたが、その中で5色デッキも人気で、デッキの多様性が見られるいい環境だったよ。シャドーバイバックという新しい要素に加え、初めてスリヴァーが登場したセットでもある。そして何より、「手札が少ないと有利」というそれまでの常識を覆した斬新なコンセプトを提供してくれた。

もちろん、青単のような手札を増やして戦うデッキもあり、コントロール系が弱いというわけでもなかった。とにかく、このセットでは紹介したいカードが沢山あり過ぎて、私も困っているんだ。少し長くなるが、最後までお付合い願えるかな?



少ない手札・有利な状況!

Cursed Scroll呪われた巻物/Cursed Scroll
(1)
アーティファクト
(3),(T):クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。カード名を1つ指定する。あなたの手札からカードを1枚、無作為に公開する。そのカードが指定されたカードであった場合、呪われた巻物はそれに2点のダメージを与える。

テンペストを代表するレアカードであり、「手札が少ないほど有利」な環境の立役者、というか主人公だ。バーンやウィニーなど、速攻系のデッキはほぼ採用していたね。とにかく、環境にタフネス3以上のクリーチャーが数えるほどだったんだ。これはまさに殺戮マシーン、しかも1マナなので青単では対処が難しい点も脅威だった。日本語版には起動コストが2マナになっているという、恐るべきミスプリントがあったのも良く覚えているよ。いやぁ、とにかく、強かった。


Scalding Tongs煮沸ばさみ/Scalding Tongs
(2)
アーティファクト
あなたのアップキープの開始時に、あなたの手札の枚数が3枚以下である場合、対戦相手1人を対象とする。煮沸ばさみはそのプレイヤーに1点のダメージを与える。

主に赤単で用いられたアーティファクトで、起動コストの不要な無色のダメージ源として重宝されていたね。テンペスト発売当初は人気のないカードだったが、『スライ』ではメインボードから3~4枚採用されるという大出世を遂げたよ。"呪われた巻物"と共に「手札が少ないほど有利」というコンセプトを見事に演出していた。


Fool's Tome愚か者の秘本/Fool's Tome
(4)
アーティファクト
(2),(T):カードを1枚引く。この能力は、あなたの手札にカードが1枚も無い場合にのみ起動できる。

先に紹介した2枚と比べると採用率は低かったが、こんなカードがスタンダードで見かけるような状況だった、と言えば当時の雰囲気が伝わるだろうか。これも「手札が少ないほど有利」というコンセプトを演出したカードの一枚だろう。バーン系デッキのメインに1枚か、サイドボードに1~2枚程度見かけられることがあったよ。




『スライ』の時代!!!

Mogg Fanaticモグの狂信者/Mogg Fanatic
(赤)
クリーチャー ゴブリン
モグの狂信者を生け贄に捧げる:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。モグの狂信者はそれに1点のダメージを与える。
1/1

マナ・カーブの1マナ枠は特に物足りない面々だらけだった赤が、ついに手に入れた1枚だ。当時の『スライ』を代表するクリーチャーの一角。軽くて使いやすい能力、ここに極まれりといった印象だね。どんな状況でも腐りにくく、しかもウィニーの多い当時の環境によくマッチしてくれた。私もずいぶん苦しめられたし、助けてもらったよ。同型対決では"ボール・ライトニング"牽制するという大仕事をやってのけてくれたものさ。



Mogg Raiderモグの略奪者/Mogg Raider
(赤)
クリーチャー ゴブリン
ゴブリンを1体生け贄に捧げる:クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+1/+1の修整を受ける。
1/1

こいつもマナ・カーブの1マナ枠を埋めてくれた重要カードだね。"モグの狂信者"と比べるとやや見劣りするものの、その能力は『スライ』のゴブリン達をより一層輝かせてくれた。次のセットのストロングホールドで登場する"モグの下働き"は2マナ3/3というスペックで、コイツがいるとタフネス4までが射程圏内になる。当時タフネス4を上回るのはごく一部の例外だけだったから、ウィニーにあって圧倒的な制圧力と言ってよかったね。



Jackal Pupジャッカルの仔/Jackal Pup
(赤)
クリーチャー 猟犬
ジャッカルの仔にダメージが与えられるたび、それはあなたにそのダメージに等しい点数のダメージを与える。
2/1

実に赤らしいデメリットを持った1マナクリーチャーがこの"ジャッカルの仔"だ。1マナでありながらパワー2というスペックは、序盤から攻め続けることが容易となり、他の色と比べダメージレースで優位に立ちやすくなった。同型対決では火力の的になってしまうが、それでも"ボール・ライトニング"を通すためには必要な犠牲としての位置付けでサイドアウトすることは少なかったかな。




アタックしなくてもダメージは入るのだ!

Fireslinger投火師/Fireslinger
(1)(赤)
クリーチャー 人間 ウィザード
(T):クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。投火師はそれに1点のダメージを与え、あなたに1点のダメージを与える。
1/1

ウィニー全盛の時代にあって、コイツの制圧力は目を見張るものがあったね。とにかく、2マナでピンガーというのはそれだけで強力だ。ミラージュの黒と緑のギルドメイジ達はライバルだったが、それでも起動マナを必要としない点は優秀だ。起動型能力でタップをコストに含むクリーチャーとしては、異例の活躍を見せた部類に入るだろうね。


Kindle焚きつけ/Kindle
(1)(赤)
インスタント
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。焚きつけはそれにX点のダメージを与える。Xはすべての墓地にある名前が"焚きつけ/Kindle"であるカードの枚数に2を加えた点数である。

大型エキスパンションには必ず存在する、赤い軽量インスタント火力の枠を担ったのがコイツだ。アイスエイジミラージュ"火葬"と比べると、クリーチャーの再生を許してしまう点と、1デュエルで3回以上打たないとメリットを感じられないという問題があった。しかし、それでも2マナ2点というだけで環境にはマッチし、4枚投入が一般的だったよ。特に同型対戦では、いかにして相手に先に打たせるかという知能戦が繰り広げられたものさ。


Jinxed Idol凶運の彫像/Jinxed Idol
(2)
アーティファクト
あなたのアップキープの開始時に、凶運の彫像はあなたに2点のダメージを与える。
クリーチャーを1体、生け贄に捧げる:対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは凶運の彫像のコントロールを得る。

これも『スライ』でよく見られたカードだね。軽量でかつ、無色な上に永続的なダメージ源だ。デメリットは軽くないが、息切れしがちだった『スライ』では最後の一押しとして活躍できたし、相手がクリーチャーレスであればまさにフィニッシャーと呼べるポジションの性能だ。



白ウィニーのアベック・シャドー

Soltari Priestサルタリーの僧侶/Soltari Priest
(白)(白)
クリーチャー サルタリー クレリック
プロテクション(赤)
シャドー
2/1

コイツは白らしい強力なウィニークリーチャーであり、いくつもの赤系デッキを屠ってきた歴戦の勇者だ。白ウィニーではほぼ4枚投入され続け、シャドークリーチャーらしく常にアタックし続けていたね。"呪われた巻物""シャドーの迷路"という対策カードが存在することで、やっと彼もまた存在を許されたといっていいかもしれないね。



Soltari Monkサルタリーの修道士/Soltari Monk
(白)(白)
クリーチャー サルタリー モンク クレリック
プロテクション(黒)
シャドー
2/1

"サルタリーの僧侶"と比較すると一歩劣るものの、こちらも白ウィニーの必須パーツとして大いに活躍し続けたクリーチャーだ。特に黒には"ダウスィーの殺害者"という大切なお客様がいたので、シャドークリーチャーにしては珍しくブロッカーとしての仕事もあったという個性を持っている。私はメインとサイドに2枚ずつという運用が多かったね。やはり、黒よりも赤の方が流行していた時代だったといえよう。



黒ウィニーの新主軸

Dauthi Horrorダウスィーの怪物/Dauthi Horror
(1)(黒)
クリーチャー ダウスィー ホラー
シャドー
ダウスィーの怪物は白のクリーチャーによってはブロックされない。
2/1

黒いシャドークリーチャーの先鋒として長く活躍したのが"ダウスィーの怪物"だね。そして白ウィニーへの分かりやすい回答としても重要だった。黒ウィニーの天敵"サルタリーの修道士"をもってしても止めることができない点は、しばしばゲームを決定付けることとなる。かくいう私も大事な大会でコイツにしてやられたことを良く覚えているよ。特に白は除去に乏しかったから、なおさら苦しい思いをしたね。


Dauthi Slayerダウスィーの殺害者/Dauthi Slayer
(黒)(黒)
クリーチャー ダウスィー 兵士
シャドー
ダウスィーの殺害者は可能なら毎ターン攻撃する。
2/2

"ダウスィーの殺害者"融通がきかないものの、タフネス2という点が魅力的な、黒シャドーの次鋒だ。ほとんどの場合、シャドークリーチャーは攻撃し続けるので問題にならないが、"サルタリーの修道士"がいる場合だけは話が別だ。その点では相方の"ダウスィーの怪物"とよくバランスが取れていたといえるだろうね。ちなみに、白いシャドー2体はアンコモンだが、黒いシャドー2体は両方ともコモンカードだよ。


Sarcomancy肉占い/Sarcomancy
(黒)
エンチャント
肉占いが戦場に出たとき、黒の2/2のゾンビ・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
あなたのアップキープの開始時に、ゾンビが1体も戦場に存在しない場合、肉占いはあなたに1点のダメージを与える。

黒ウィニーの1マナ枠には本当に選択肢が少なかったが、このレアカードが何とかしてくれた。CIP能力で出したトークンが死んでしまうとデメリットだけが残る、という面白いデザインだ。他にゾンビをコントロールしていればいいのだが、当時は優秀なゾンビが不在だったため、それなりのデメリットだった。後にエクソダス"カーノファージ"という優良ゾンビが登場してからはその点も改善され、より強化されたね。



さて、テンペストの第一回はこんなところで終わりにしようか。アイスエイジ・ブロックは、今度こそ本当に消え去った。『スライ』の隆盛、シャドークリーチャーを主軸としたウィニーデッキの台頭、そして"呪われた巻物"がもたらした「手札が少ないと有利」という新しいコンセプト。大型エキスパンションというものがこれほどまでに環境へ大きな影響を与えるのか、と驚いたものだよ。あの頃のワクワクした感じは、今でも忘れられないね。では次回も引き続きテンペスト時代を彩ったカード達を紹介していこう。