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タグ:アイスエイジ

スタンダード・リーガルのセット

日本でマジックが徐々に普及し始めたころの話だ。アイスエイジが登場したころは、私の周辺でもたまにスタンダードの大会が実施されるようになっていてね。ミラージュ発売時にはその数はもっと増えてきた。私は地方に住んでいたが、ちょっと足をのばせばどこかしらで大会を見つけることができたよ。

今思うと、トーナメントプレーヤーを取り巻く環境が少しずつ整備されていく流れを目の当たりにしていたんだね。しかし、それに伴って今では考えられないような環境の変化にも出くわしたんだ。

ミラージュブロック発売前後では、スタンダード・・・当時はタイプ2と呼んでいたが、そのレギュレーションに混乱があった時期だったともいえる。当時は基本セット1つと、発売時期の新しい順で2つまでのエキスパンションが使用可能とされていた。つまり、ミラージュ+アライアンス+第5版という環境が誕生した。


ブロック制の導入

ところが、ウェザーライト発売後にこれが覆った。使用可能セットにブロックの概念が導入され、発売時期の新しい順で2つまでのブロック+基本セット1つというくくりに変わった。当時はアイスエイジブロックという考え方が普及していなかったが、発表によればこうだ。1997年7月以降のスタンダード・リーガルなカードセットはアイスエイジ、ホームランド、アライアンス、ミラージュ、ビジョンズ、ウェザーライト、第5版となった。

ホームランドアイスエイジと関係なかったが、ブロックの概念登場に伴い無理やりアイスエイジブロックに編入されてしまったんだね。これがのちのコールドスナップ発売によって覆った時の驚き、きっと当時を体験した我々にしか分からんだろうね。コールドスナップは発売が2006年、まさに10年越しの大事件だったよ。

ミラージュの発売が1996年の10月なので、1年もたたないうちに同じレギュレーションで使えなくなっていた、アイスエイジアライアンスが復活してしまった。第4版から第5版への切り替えでは、アイスエイジのパワーカードはおおむね再録されてたが、アライアンスからは全く再録がなかった。しかもこの環境がスタンダード・リーガルだった時期は、次のテンペスト発売までのおよそ3ヶ月だけだったんだ。


影響の大きかったアイツ

プレーヤーたちは悲喜こもごもだったね。第4版から第5版への変遷で最大の影響力を持ったのは、やはり"剣を鋤に"がなくなったことだったろう。もちろん"稲妻""ミシュラの工廠"といったカードの退場も影響があったが、"稲妻"の穴は"火葬"が頑張っていたし、"ミシュラの工廠"に至っては色は関係なく影響を受けていた。だから白のクリーチャー除去機能がそっくり失われた"剣を鋤に"の消失は、とても深刻な影響があったといえるんだ。

Swords to Plowshares剣を鍬に/Swords to Plowshares
(白)
インスタント
クリーチャー1体を対象とし、それを追放する。それのコントローラーは、そのパワーに等しい点数のライフを得る。




そんな中、アイスエイジブロックがまるごと復活してしまった。同時にアイスエイジに収録されていた"剣を鋤に"も復活したからね。白使いは大喜びだ。アライアンスも復活していたから、当然のように『カウンター・ポスト』が復活することとなったよ。しかも"ジェラードの知恵""沈黙のオーラ"といった低速の白いデッキに迎合したカードが多かったからね。あの3か月間はマジック史上でもまれに見るような白い夏だったんじゃないかな。

"剣を鋤に"が落ちたとき、白使いは来るべき日がついに来た、と嘆いたものさ。たった1マナでほとんどのクリーチャーを追放、デメリットはコントローラーのライフ回復だけ・・・しかもインスタントだ。アイスエイジの頃から考えると、カードパワーの水準はすごく上がってるのに、再録されることもない。当然、強すぎて環境に与える影響が大きいからだ。


じゃあ、代わりを探なくては!

あの頃、我々は"剣を鋤に"後釜探しに躍起になっていたよ。ミラージュ"死後の生命"はインスタントだが、3マナもかかる上にトークンまで与えてしまう。"平和な心"ではシステム系クリーチャーに対しては無力だ。ウェザーライトには"関税"なんてカードもあったが、これも白ウィニーではデメリットが大きく、コントロールでは後半無力という問題があった。

Tariff"関税/Tariff"
(1)(白)
ソーサリー
各プレイヤーは、自分が点数で見たマナ・コストが最も高い自分がコントロールするクリーチャー1体のマナ・コストを支払わないかぎり、そのクリーチャーを生け贄に捧げる。プレイヤーがコストが最も高いクリーチャーを2体以上コントロールしている場合、そのプレイヤーはどちらか1体を選ぶ。


しかし、本当に探さなくてはいけなかったのは、抜けた"剣を鋤に"穴埋めカードなんかじゃなかったんだ。その"剣を鋤に"のなくなった新しい環境で活躍できるカードが何か、どんなデッキが新たに台頭するかを考えるべきだった。しかし、当時の未熟な私にはその着眼点を持つことができなかったんだ。

アイスエイジ復活時には、たまたま白が優遇されていたから『カウンターポスト』が再興したが、でも今考えればもっと違ったデッキをぶつけてみるという選択肢はあったろうね。いつでもその時でしか成立し得ないデッキというのがあって、セットが加わる、抜けるのタイミングではそうした楽しみを体験することが、マジック醍醐味なんだろうと思うよ。


復活はいつ決まったのか

ちなみにウェザーライトには対『カウンターポスト』用のカードである"マナの網"というカードがあった。おそらく、アイスエイジブロックのスタンダード復活は、ウェザーライト印刷前には決まっていたんじゃないかな、と思っているよ。

Mana Webマナの網/Mana Web
(3)
アーティファクト
対戦相手がコントロールする土地がマナを引き出す目的でタップされるたび、そのプレイヤーがコントロールする土地のうち、その土地が生み出すことのできるマナと同じタイプのマナを引き出せる土地をすべてタップする。



"平地""島""Kjeldoran Outpost""アダーカー荒原"がある状態で、メインフェイズに"アダーカー荒原"からマナを出すと、これら全てがタップされてしまう。相手のターンに"対抗呪文"を打つと、"Kjeldoran Outpost"でトークンを出すかをその場で判断しなくてはならなくなる。地味なカードだが、『カウンターポスト』対策にサイドボードへ忍ばせていたものさ。


失敗した後釜探し

他にも"アーナム・ジン"が抜けたときに"イラクサの牙のジン"を使ってみたり、"セラの天使"の代わりに"メリース・スピリット"を使ってみたりと、色々な試行錯誤をして失敗を経験した時代だったんだ。そんな中、勝ったのは新環境にマッチしたデッキたちだった。過去の栄光を引きずり、2級品で我慢しようとする私は敗た。新しく生み出されたデッキの面々は、当然その環境での1級品ばかりだった。
Nettletooth Djinnイラクサの牙のジン/Nettletooth Djinn
(3)(緑)
クリーチャー ジン
あなたのアップキープの開始時に、イラクサの牙のジンはあなたに1点のダメージを与える。
4/4



ErhnamDjinnセラの天使







Melesse Spiritメリース・スピリット/Melesse Spirit
(3)(白)(白)
クリーチャー 天使 スピリット
飛行、プロテクション(黒)
3/3



次のテンペストでは、また大きな環境の変化が訪れる。手札が少ないと有利、という当時では考えられない環境がもたらされたんだ。2度目の"剣を鋤に"との決別は、私を大きく成長させてくれた。そう、受け入れろ!と気づいたんだ。マジックは教えてくれる。それは人生でも同じだ、とね。

新しいカード達は魅力的だけど、何度も自分を勝たせてくれたあのデッキ、あのカードが名残惜しい、だなんて言っていては時代に取り残されちまうってことさ。環境を受け入れる度量をもって、この先のマジックも人生も楽しんでいきたいものだね。

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前篇はこちらから

アイスエイジのトップレア

そんなアイスエイジの中で長らくトップレアの位置にいたのが”道化の帽子/Jester's Cap”だ。

Jester's Cap

“道化の帽子/Jester's Cap”
(4)
アーティファクト
(2),(T),道化の帽子を生け贄に捧げる:プレイヤー1人を対象とする。あなたはそのプレイヤーのライブラリーからカードを3枚探し、それらを追放する。そのプレイヤーは、自分のライブラリーを切り直す。


このカードが効果的に働くのは展開の遅いデッキか特定のカードに頼ったコンボデッキの場合だろう。直接盤面にアドバンテージをもたらさないこのカードがトップレアだったということが、アイスエイジ時代の環境の遅さを物語っているね。メインデッキに4枚投入されることはまずなかったが、アーティファクトなので多くのデッキで使われることとなり、結果価格が高騰したようだ。スタンダードでアイスエイジが使えた時代では"ネクロポーテンス”"永劫の輪廻”よりも高かった。

”道化の帽子”には敵わないが、人気があったのは5種類の友好色ペインランドだろうね。2色の色マナを出せるが、1ダメージを食らってしまうというあれだ。その後長らく基本セットにも顔を出すことになるペインランドたちは、このアイスエイジが初出だ。当時はカウンターポストが流行していて、青白の"アダーカー荒原”が人気だったね。他にもアーニーゲドンの白緑用”低木林地”や、ステロイドの"カープルーザンの森”がよくトレードされていた。黒赤の"硫黄泉”や青黒の"地底の大河”エンチャントやアーティファクトに対処できない色の組み合わせだったせいか、やや人気で劣っていた。

ダメラン


トーナメントで活躍したレアカードたち

その他の有名レアを駆け足で紹介していこう。

Jokulhaups

“ジョークルホープス/Jokulhaups”
  (4)(赤)(赤)
ソーサリー
すべてのアーティファクトと、すべてのクリーチャーと、すべての土地を破壊する。それらは再生できない。



当時最高の破壊力を持ったリセットボタン、"ジョークルホープス/Jokulhaups”。”神の怒り”"ハルマゲドン”+"粉砕の嵐”でたった6マナなので、破格のマナ・コストといえるだろう。"土地税”だけが場に残り、後はきれいさっぱり、という光景に出くわしたこともあるね。


Pox“悪疫/Pox”
(黒)(黒)(黒)
ソーサリー
各プレイヤーは、自分のライフの端数を切り上げた3分の1を失う。その後各プレイヤーは自分の手札にあるカードの端数を切り上げた3分の1を捨てる。その後各プレイヤーは自分がコントロールするクリーチャーの端数を切り上げた3分の1を生け贄に捧げる。その後各プレイヤーは自分がコントロールする土地の端数を切り上げた3分の1を生け贄に捧げる。

“悪疫/Pox”は黒いコントロール系カードの中でもかなりパワフルだ。端数切り上げなので、クリーチャーや手札が2の場合は、半分を持って行けるという理屈だ。自分への影響も大きいので気軽には使えないが、上手く使えば大きなアドバンテージを得られるレアらしいカードだったよ。ただし、ライフ損失が大きいので"ネクロポーテンス”と一緒に使うというのは難しかったようだね。加えて言うと、これもテキストが長くて手ごわかった。


Blinking Spirit


“またたくスピリット/Blinking Spirit”
(3)(白)
クリーチャー スピリット
(0):またたくスピリットをオーナーの手札に戻す。
2/2


サイズの割にコストが重いクリーチャーだが、マナを消費せず手札に帰れるので除去にめっぽう強く"神の怒り”を打つデッキとの相性が良いのも幸いして白いコントロール系デッキで見かけられたクリーチャーだ。前述の"ジョークルホープス”と一緒に使われたこともある。その後何度か基本セットにも再録されているね。思いのほか飛んでいない点には注意だ。


Stormbind


“嵐の束縛/Stormbind”
(1)(赤)(緑)
エンチャント
(2),カードを1枚無作為に選んで捨てる:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。嵐の束縛はそれに2点のダメージを与える。


これは以前にも紹介したことのある、高性能な繰り返し使える除去だ。無作為に手札を捨てるというコストが珠に傷だが、手札が全て除去兼直接火力になるというのは大きなプレッシャーをかけられるため、ゲームを有利に進めやすくなるパワーカードだった。


まさかの優良レア

高値とは言えないが、面白いレアカードとしては"オークの司書/Orcish Librarian”なんていうのがいたね。ちょっとおっちょこちょいそうなオークが、食欲に負けた様子を描いたイカしたイラストが印象的なレアカードだ。

Orcish Librarian“オークの司書/Orcish Librarian”
(1)(赤)
クリーチャー オーク
(赤),(T):あなたのライブラリーのカードを上から8枚見る。それらのうちの4枚を無作為に選んで追放し、その後残りをあなたのライブラリーの一番上に望む順番で置く。
1/1


当時は冗談みたいな能力だと思っていたので、実は有用な能力だと知った時には驚いたものだ。追放される4枚は最初から引かなかったカードだと考える。4枚のカードを自由に並べ替えられる能力が継続して使えるなっていうのは、赤でありながらドローの安定性を高められるなかなかの効果と評価できるだろう。


レア以外の強力カード

アイスエイジの魅力はレアばかりではない。"水流破””紅蓮破”といった色対策カードはコモンだし、それまでアンコモンとして基本セットに収録されていた"対抗呪文”が初めてコモンとして再録された。また赤の優良火力である"火葬”アイスエイジのコモンが初出だ。アンコモンには最強除去”"剣を鍬に”や優良アーティファクトの”氷の干渉器”が再録されていたし、制限カードの”Zuran Orb”もアンコモンだ。そして何より、最強サーチカードの"Demonic Consultation”がある。

Demonic Consultation“Demonic Consultation”
(黒)
インスタント
カード名を1つ指定する。あなたのライブラリーのカードを上から6枚追放する。その後あなたが指定したカードが公開されるまで、あなたのライブラリーの一番上のカードを公開し続ける。そのカードをあなたの手札に加え、これにより公開された他のすべてのカードを追放する。


最初の6枚に必要なカードが出きってしまうと、そのままライブラリーが吹き飛ぶ、というハイリスクなカードだ。だがさっき"オークの司書”のときにも話した通り、追放するカードは引かなかったと思えばいい、という理屈でライブラリーをどんどん追放していき、その時必要なカードを手に入れるためのカードだね。1枚しかデッキに入っていないカードに対して使うのは危険すぎるが、デッキに4枚入っているカードに対してはある程度安心して指定できる。直接手札に入る、インスタントであるという点が特に評価される超強力カードだ。


氷河期の厳寒を知れ!

さて、話しは変わるがね、まずはこのカードを見てほしい。

Lightning Blow

“Lightning Blow”
(1)(白)
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで先制攻撃を得る。
次のターンのアップキープの開始時に、カードを1枚引く。


良くあるタイプのコンバット・トリックだね。パワーが上がらないのはちょっと寂しいが、限定構築などでは良い働きをすることもあるだろう。ドローが次のアップキープ、というのはビジョンズまでの常識で、即時的にカードが引けるキャントリップはウェザーライトからなんだよ。さて、次のカードを見てくれ。

Gravebind

“Gravebind”
(黒)
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。このターン、それは再生できない。
次のターンのアップキープの開始時に、カードを1枚引く。



これはどうだろう。限定構築であってもなかなか有効に活用できる機会のなさそうな効果だ。1マナでカードが引けるから、という理由でデッキに入れることもあるだろうか。しかしデッキ圧縮効果だけを狙って選ぶにしても、もう少し他に選択肢があるような気がするね。ではもう一枚だ。

Trailblazer

“Trailblazer”
(2)(緑)(緑)
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。このターン、それはブロックされない。



緑が敵対色である青っぽい効果を狙ったが故の”当然の酬い”だろうか。いくらなんでも効果に対してマナ・コストが高すぎると感じざるを得ない。キャントリップもないし、ちょっとデッキに入れるのがためらわれる。これを入れるなら"森”を増やした方が間違いないのではと思ってしまうよ。まあ、こんなカードもあったんだ。

さて、これらのカードには、実は隠された共通点がある。まずすでに述べたとおり、アイスエイジのインスタントであり、そして驚くべきことにこれらは全てレアカードなんだ。・・・これがレアだと!ふざけるな!

レア・カードなんだ・・・よ。いや、すまん、取り乱してしまった。

どんなセットにも弱いレアカードはある。全てのカードを強くするだなんてできないから、それは当然のことだ。しかし、レアらしさ、とでも言えばいいかな。コモンカードにはないような、よし、このカードを軸にデッキを作ってみよう、と思わせるような魅力を持つカードが今のレアカードだと思っているよ。

しかし、こいつらはどうだろう。"Gravebind”を中心に据えたデッキを作ろうと思ったデュエリストは、おそらく世界に"Black Lotus”のマナ・コストと同じ程度しかいないだろう。デッキに"Trailblazer”を4枚入れていたおかげで勝ったデュエルの数は、"Time Walk”で得られるターン数より少ないのではないかと予想するよ。

・・・時代ってやつかね。とにかく、レアが厳しいんだ、アイスエイジってヤツは。普通の感覚ではまさかレアだとは思えないようなカードが目白押しだ。効果が派手で弱い分には単にカスレアとして納得できるんだが、今紹介したようなとてもレアとは思えないようなカードが本当に多い。しかも、エキスパンション・シンボルを見てもレアリティ区分が分からない。レアリティで色が付いたのはエクソダスからなので、それまでは封入されている位置でレアリティを推測するほかなかった。私の世代のデュエリストは、このアイスエイジを開封することで"精神鍛錬”を重ねていったといえるね。

Lhurgoyf他にも3マナ2/2で沼渡りを持つだけのトカゲ、その相方の島渡りをもつ熊、タップで1点軽減効果を土地に付与するエンチャント(土地)など、ちょっと我慢ならないようなレアカードが・・・緑、こいつら全部緑だ!特に緑がひどい。いや、緑は"ルアゴイフ”だけが一人気を吐いていた。青の方がひどいな。とにかく、地味だったり、複雑すぎたり、限定的な効果しかなかったり、やたら弱かったりと激弱なレアがてんこ盛りのセットだ。それに気づくまで、本当に"精神的苦悶”の連続だったよ。さすが氷河期がテーマなだけあって、レアが極寒というわけさ。


こうやって精神が鍛えられた私だが、その後もミラージュプロフェシー厳しい洗礼を受けることになる。それでもカスレアの平均水準がアイスエイジを下回るということはなかったね。いや、きっと未来永劫、ないだろう。全体で見れば良いレアカードもそれなりにあるセットだが、カスレアの水準というものもセットを評価するときの捉え方として頭の片隅に置いてくれ。それがアイスエイジを知る者からのアドバイスだよ・・・。

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アイスエイジはマジック初の独立型エキスパンションで、ブースターパックだけでなくスターターボックスという60枚入りの小箱での販売もされていたんだ。初めて基本セットとは違う絵柄の基本地形が登場し、これを使うのはちょっとしたお洒落だった。氷河期を舞台としたセットだけあって、涼しげなイラストが熱いデュエルに一服の清涼をもたらしてくれたものさ。

plainsイラストが連続していてお洒落


氷雪地形はイマイチだった

アイスエイジのテーマとして、氷雪地形を利用したカードというものがあったね。基本土地の一種で、氷雪森とか氷雪島とかあったわけだ。それに付随して、様々なカードに氷雪土地を利用したり参照したりするようなカードが存在していたんだが・・・。こいつらがどいつもこいつもポンコツなんだよ。トーナメントで活躍したカードはないと言っていい。強いて言えばGlacial Crevassesという赤いエンチャントが使われていたかな。ただし、このカードは現代の常識からはかなりかけ離れたカードだ。

Glacial Crevasses

Glacial Crevasses
(2)(赤)
エンチャント
氷雪山を1つ生け贄に捧げる:このターンに与えられるすべての戦闘ダメージを軽減する。



能力だけ見れば、まあ、こんなカードもあるかな、といった感じだが、このカードはまさかの赤だ。赤いカードなのに防御専用の効果を持つという、かなり個性的なカードといえるだろうね。一部の低速な赤いデッキに使用されていた。ついでに言うと、こんな良く似たカードも存在していた。

Sunstone

Sunstone
(3)
アーティファクト
(2),氷雪土地を1つ生け贄に捧げる:このターンに与えられるすべての戦闘ダメージを軽減する。



ちなみにGlacial CrevassesがレアでSunstoneはアンコモンだ。起動マナの要不要や生贄にできる氷雪土地の違いがあるが、なぜこんな似たカードを同じセットに収録したのかは謎だ。氷雪土地に関するカードははるか後になって発売されるコールドスナップというセットで大幅に補強されるが、正直言ってアイスエイジだけでは折角の新要素を活かしきれていなかった感があるね。


ゆっくり累加アップキープしよう

アイスエイジはゆっくりした環境だったのだが、その原因はこのセットのキーワード能力である累加アップキープがかもしれないな。これはパーマネントのアップキープにマナやライフの支払いを要求するものだが、毎ターン支払いコストが増えていってしまうんだ。例えば累加アップキープ(2)と書いてあれば、最初のアップキープには2マナ支払うだけでいいんだが、次のターンは4マナ、その次は6マナ、という具合に維持コストが増えていってしまう。こうしたカードが多くあり、かつ活躍できるような環境を整備するには、全体的にカードパワーを下げて環境を遅くするのがベストだったのだろう。

正直言って、累加アップキープのあるカードで大きな活躍をしたカードは少ないのだが、いくつか紹介しよう。

InfernalDarkness

Infernal Darkness
(2)(黒)(黒)
エンチャント
累加アップキープ (黒),1点のライフを支払う。
土地がマナを引き出す目的でタップされた場合、それは他のいかなるタイプのマナの代わりに(黒)を生み出す。


黒単色デッキ相手には効果がないが、それ以外のデッキには強烈なマナ拘束手段となるカードだ。当時のスタンダードで、トーナメントデッキのサイドボードに入っていたこともある稀少な累加アップキープ持ちカードだよ。

Glacial Chasm

Glacial Chasm
土地
累加アップキープ 2点のライフを支払う。
Glacial Chasmが戦場に出たとき、土地を1つ生け贄に捧げる。
あなたがコントロールするクリーチャーは攻撃できない。
あなたに与えられるすべてのダメージを軽減する。


この頃までたまに見かけられたマナの出ない土地で、その中でも実用的な部類のカードだ。デメリットの大きさが目立つが、それ以上にあらゆるダメージを軽減できるというメリットが凄まじい。こんな能力なのに、このカードはアンコモンなんだよ。小難しい使い方はせず、遅いデッキが1~2ターンしのぐ目的で使われることがあったかな。


IllusionsofGrandeurIllusions of Grandeur
(3)(青)
エンチャント
累加アップキープ(2)
Illusions of Grandeurが戦場に出たとき、あなたは20点のライフを得る。
Illusions of Grandeurが戦場を離れたとき、あなたは20点のライフを失う。


Donateおそらく世界一有名かつ強力な累加アップキープを持つカードだろう。スタンダードでアイスエイジが使えたころは全くのカスレアだったが、ウルザズ・デスティニー<寄付/Donate>というカードが誕生してから評価がひっくり返った。自分が20ライフを獲得した後、<寄付>を使い相手に送りつけるんだ。Illusions of Grandeurをバウンスしたり、あるいは放っておけば累加アップキープが支払えなくなって勝手に場を離れてくれる。キーカードが2枚しかない即死コンボデッキの誕生ってわけだ。


何て書いてあるのか分からないカードたち

NecropotenceこのIllusions of Grandeurと一緒に活躍したのが、同じアイスエイジの黒いレアである<ネクロポーテンス>だ。このカードについては以前話したことがあったね。あっという間に必要なカードを集めてくれる、超強力ドローエンジンである<ネクロポーテンス>は、本来ドローが得意な色の青だけで完結するIllusions of Grandeur<寄付>のコンボデッキにあって、黒なのに中核カードとして活躍した。結果、このデッキはネクロドネイトと呼ばれるまでになったんだ。あまりにも隆盛を誇ったため、最終的には<ネクロポーテンス>自体が禁止カードになってしまった。

その<ネクロポーテンス>の特徴が、やたらと細かい字で書かれたルール・テキストだ。とにかく英文が長くて、滅多に出てこないような単語もあり、どんなカードか理解するのにも苦労した。最後の一文ではご丁寧に"このライフの損失は軽減したり移し替えたりできない"だなんてルールの解説までしてくれている始末だ。アイスエイジには日本語版がなかったし、今のようにインターネットも充実していなかったので、このカードの正しい効果について理解したのはディープ・マジックという書籍が出版されてからだったと思う。この本は当時唯一、アイスエイジまでの全カードが日本語訳付きでリスト化されていて、そりゃもう狂ったように読んだものだよ。

英文が長いカードをもう一つ紹介しよう。今のオラクルの文章も長いのだが、当時の雰囲気を味わってもらうために私がカードの英文を訳してみるよ。

Dance of the DeadDance of the Dead
(1)(黒)
エンチャント(死んだクリーチャー)
いずれかの墓地にあるクリーチャーカードを、あなたのコントロール下で、タップ状態かつ、+1/+1カウンターを乗せた状態で直接場に出す。そのクリーチャーは召喚されたばかりであるかのように扱う。このクリーチャーはコントローラーのアンタップフェイズにアンタップしない。コントローラーのアップキープフェイズの終了時に、このコントローラーはこのクリーチャーをアンタップするために(1)(黒)を支払ってもよい。もしDance of the Deadが場を離れたなら、このクリーチャーをオーナーの墓地に埋葬する。

アンタップフェイズだのアップキープフェイズだの、それに埋葬だなんて古い言葉が目白押しだね。まあ、とにかく、要は墓地からクリーチャーを釣ってくるカードなんだがね。とにかく文章が長くて、字が小さい。しかも全部英語だ。<ネクロポーテンス>のような効果の分かりづらさはないものの、最初に見たときは読むのが大変だったものさ。面白いカードなので良く使ったし、今でもヴィンテージ環境で使われるカードの一つだそうだ。


トリスケリオンとのコンボを見せた強力カード

もう一つテキストが難しい、アイスエイジを代表するカードを紹介しよう。いやあ、ははは、このカードは何と<トリスケリオン>を使ったコンボデッキに使われたという、まさにこのトリ助・リオン一推しの、アイスエイジ最高レアカードだ!大人気だったせいか時のらせんのタイムシフトカードでもあるので、君も聞いたことがあるかな。当時のテキストをそのまま訳すとこんな感じだ。

EnduringRenewal永劫の輪廻/Enduring Renewal
(2)(白)(白)
エンチャント
あなたは手札をテーブル上に公開した状態でプレイする。あなたがクリーチャーカードをライブラリーから引くとき、そのカードを捨てる。クリーチャーが場からあなたの墓地に行くなら、そのクリーチャーをあなたの手札へ戻す。


Dance of the Deadと比べるとテキストが短いが、当時の私にはちょっと難解な文章だった。そもそも、死んだクリーチャーが手札に戻るエンチャントが存在する、なんて常識から外れた効果が理解を妨げていたんだろう。

トリスケリオン最初は使い方が分からなかったが、コンボデッキで活躍した。クリーチャーを生贄に捧げると2マナを生む<アシュノッドの供犠台>と0マナアーティファクト・クリーチャーで無限マナを出した後、<トリスケリオン>のダメージで勝つ、というものだ。なに、無限マナが出ているのだから何も<トリスケリオン>でなくてもいいだって?まあ、確かにそうだ・・・。テンペストが発売されると、このデッキは<トリスケリオン>が抜けてしまった・・・。


何度も死んでいく。不憫。


後半に続く

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