(前篇はこちら)

2つ目の強さについて話すと、カードの経済性についてだ。例を挙げると、君が<エルフの神秘家/Elvish Mystic><巨大化/Giant Growth>打ったとき、対戦相手が<ショック/Shock><エルフの神秘家>に打ったとしよう。、この流れで君は<エルフの神秘家><巨大化>の両方を失い、一方で対戦相手は<ショック>だけを失ったことになる。君は2枚のカードを失っているので、相手より2倍損しているといえるね。<巨大化>は何もしていないから、明らかにカード1枚分は元を取れていない。

ここで<ネクロポーテンス>について考えてみよう。もし<ネクロポーテンス><無効/Annul>で打ち消されたなら、1対1で引き分けだ。いや、むしろマナコストの面で<ネクロポーテンス>が負けている。しかし<ネクロポーテンス>が場に出て、ライフが2点払えるなら、おおよそ元は取れている。2ライフでは2枚しか手札が増えないが、まあ、戦場にお互い何もないとしてだが、それで十分元が取れているんだよ。

<ネクロポーテンス>の効果で1枚カードを増やせれば、これは<ネクロポーテンス>自体と1対1であると考えよう。まだ何もしていない。むしろ1ライフ失っているね。では、もう1ライフ払ってみよう。すると、<ネクロポーテンス>1枚でカードが2枚増えた勘定だ。1枚分の得が生まれた。しかし、ライフを払っているわけだから、丸々1枚分得したとは言えない。

3ライフ目では支払いと利益が逆転する。自分が使ったのは、<ネクロポーテンス>と3ライフだ。一方、得たものは3枚の手札。1番目の強さの話を覚えているかな?3枚のうちダメージソースが1枚でもあれば、カードのライフ的な期待値は+1点になるから利益が出る。逆にいうと<ネクロポーテンス>を使うデッキでは、3枚カードを引いたときに最低1枚はダメージソースを期待できるデッキ構成が望ましいということだ。

あえて極端な言い方をすれば、4ライフ以上の支払いは一方的な暴利だ。ダメージソース1枚を引けばその時点で1ライフ分得をするのだから、たくさん引くほど利益が増えるわけだ。付け加えると、それを1ターンでやってしまう。<ネクロポーテンス>は1ターンに1ライフしか払えないようなポンコツではないし、この手のデッキにはライフ回復手段も豊富に入っている。※1ターンに1ライフしか払えないカードも、とてもポンコツといえるような性能ではなく様々なデッキで活躍した。

ファイレクシアの闘技場

手札が7枚以上になってしまうとしても、必要ないカードが手札にあると思えば余計にライフを払ってもいいだろう。相手との差が広がる一方なのだから、躊躇する必要はない。ただ、相手が直接火力を持っていそうであれば少し控えるべきだがね。

3つ目の強さ、それは利用機会の保全。<ネクロポーテンス>は場に出てしまいさえすれば、すぐに好きなだけ能力を起動できる。しかも、ライフを払ってから手札に入れるまでが能力とされている。これは、ライフを払った後に<ネクロポーテンス>が破壊されていたとしても、払った分は手札を増やすことが約束されているということだ。

場に出さえすれば、何もせずに墓地に行ってしまうということはあり得ない。さっきの<巨大化>みたいにキャストしても何もせず墓地に行く、ということがない。クリーチャーは戦場に出てもすぐ除去されることも多い。ところがドロー系のカードは基本的に何もせずに終わるということがない

違う見方では、対戦相手は<ネクロポーテンス>破壊しようとカードを使えば、損をするといえる。1枚のカードを破壊するのに、カードを4枚も5枚も引かれていては割に合わないからね。カードを引くということは相手に損をさせているのが良く分かるだろう。

最後の強みとして、"手札が多い"ということの強みをお伝えしよう。たくさんカードを引く、ということは、選択肢を増やしその状況に最も適した手を打てるようにする、ということだ。「あの時あのカードを引ければ勝っていたのに」というセリフを言ったことがあるだろう。"手札が多い"とは、まさにここで価値が出てくる。どんなに多くのカードを引いていても、不要なカードだったり、マナが足りなくてキャストできなかったりしては意味がない。しかし、多くのカードを引いているという事実はこういった事態そのものを少なくしてくれる、つまり動きを安定させ勝率を上げる効果がある。

また、不確定要素を減らし戦略を組み立てやすくするというのも大きな効果といえるね。「次のターン除去が引ければ勝てるけど、そんな事に期待していても危ないからアタックは見送ろう」といった状況でがあったとしよう。ところがその除去が既に手札にあるなら、そもそも悩む必要がない。逆に相手にとっては「あれだけ手札が多いと除去が飛んでくるかもしれない。ブロッカー確保のためにアタックはやめておこう」という不安を誘うことができる。

長々と話してきたけど、ドローの効果がわかってもらえたかな?当然、ドローカードだけでは勝てないわけだからバランスが大切だ。ちょっと話を盛ったところもあるが、カードドローの価値と、それに<ネクロポーテンス>の強さは分かってもらえたと思う。1996年の世界大会では会場を席巻し結果を残した。<ネクロポーテンス>は現在、様々なフォーマットで禁止カードになっている。

ところでこの話にはオチがあってね、<ネクロポーテンス>で懲りたと思われた1ライフ1ドローだったが、その後こんなカードが印刷されてしまった。

<ヨーグモスの取り引き/Yawgmoth's Bargain>
(4)(黒)(黒)
エンチャント
あなたのドロー・ステップを飛ばす。
1点のライフを支払う:カードを1枚引く。

ヨーグモスの取引

ここまで強力な効果なら、高いマナコストだなんて何とかしてしまうのさ。こちらも現在、様々なフォーマットで禁止や制限カードとなっているよ。君も優れたデュエリストになろうと思うなら、この例は忘れて過去の失敗から学ぶ意志が必要だな。